AIミステリー2/7話「紙の匂い、雪の匂い」

AIに気ままに書かせてみた

登場人物

  • 朝倉澪(あさくら・みお)……フリーライター。語り手。
  • 久世真司(くぜ・しんじ)……元編集者。霧ヶ峰の旧天文台「星影館」の管理人。
  • 鳴海紗季(なるみ・さき)……装画家。寡黙で、白い指先をしている。
  • 樋口朔(ひぐち・さく)……中学校教師。几帳面で、声が低い。
  • 片桐遼(かたぎり・りょう)……時計修復師。油の匂いをまとっている。
  • 三枝冬馬(さいぐさ・とうま)……映像作家。笑い方が軽い。
  • 柚木千鶴(ゆのき・ちづる)……古書店主。静かな観察眼を持つ。

食堂は窓が大きく、夜の山を一枚の黒い絵のように切り取っていた。硝子に映る私たち七人は、まるで別の席で黙っている幽霊のようだった。食卓には山菜の炊き合わせ、鹿肉の赤い煮込み、湯気の立つ蕎麦。土地の匂いは豊かなのに、誰も味を語らなかった。

久世は最初の封筒だけを開けた。プリンターの紙を一枚ずつめくる音が、皿の触れ合う音よりはっきりしていた。

そこに書かれていたのは、雪の夜、七人の書き手が山の館に集められ、過去の火事の真実を待つ場面だった。情景は驚くほど今と似ている。廊下の軋み、ストーブの灯油の匂い、窓の外に立つ白樺の影まで同じだった。けれど最後の一行だけが、妙に生々しかった。

「火をつけた人間は、いまも油の匂いを消せない。」

紙が止まった。

片桐が先に笑った。短く、喉だけで鳴らす笑いだった。 「AIも安っぽい決めつけをするんだな」

「決めつけじゃないよ」

久世はワイングラスを持ったまま、片桐を見た。 「原稿の余白に書かれていたメモが元だ。誰かの手で、そう書かれていた」

私は思い出していた。十二年前の火事のあと、焦げた廊下に、不意に混じっていた機械油の匂いを。煙とも灯油とも違う、冷たい金属の匂い。だが、その記憶は私ひとりのものではないはずだった。

鳴海が箸を置いた。 「もうやめて。昔のことを掘り返して、何になるの」

久世は静かに答えた。 「誰かが楽になる」

「それ、死にかけた人間の台詞じゃないな」 冬馬が言うと、久世は薄く笑っただけだった。

食後、雪が降り始めた。大粒で、しかし音のない雪だった。談話室に戻ると、久世は二十三時に第七話を読むと告げ、それまでは誰とも話したくないと言って、二階の観測室へ上がっていった。黒い背中が螺旋階段の先へ消えると、館は急に広く、寒くなった。

そのとき、柱時計がひときわ甲高く鳴いた。片桐が見上げて、独り言のように言った。

「七分も進んでりゃ、こんな古いやつはすぐ疲れる」

誰も返事をしなかった。窓の外では、積もり始めた雪がドームの丸みをじわじわと白くしていた。

そして二階から、何か硬いものが床を打つ鈍い音がした。

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