AIミステリー5/7話「七分のずれ」

AIに気ままに書かせてみた

登場人物

  • 朝倉澪(あさくら・みお)……フリーライター。語り手。
  • 久世真司(くぜ・しんじ)……元編集者。霧ヶ峰の旧天文台「星影館」の管理人。
  • 鳴海紗季(なるみ・さき)……装画家。寡黙で、白い指先をしている。
  • 樋口朔(ひぐち・さく)……中学校教師。几帳面で、声が低い。
  • 片桐遼(かたぎり・りょう)……時計修復師。油の匂いをまとっている。
  • 三枝冬馬(さいぐさ・とうま)……映像作家。笑い方が軽い。
  • 柚木千鶴(ゆのき・ちづる)……古書店主。静かな観察眼を持つ。

眠れる者は誰もいなかった。私は夜更けの館を歩き、冷え切った廊下の先で柱時計の蓋を開けた。振り子はまだ律儀に揺れていた。古い木の中から、金属が擦れるごく小さな音がする。懐中電灯を差し込むと、裏板のねじがひとつ欠けていた。

観測室の久世の手から出たねじと、ぴたりと合った。

「こんな時間に何してる」 背後から片桐の声がした。

振り向くと、彼は暗がりのなかに半分溶けて立っていた。セーターの袖口に、乾いた黒い染みがある。油か、煤か、遠目にはわからない。

「この時計、わざと進めたのね」

片桐はしばらく黙っていた。やがて、肩で息をつくように笑った。 「七分だけ。たいした細工じゃない」

私はそこで、夜の輪郭がひとつにつながるのを感じた。久世は九時に観測室へ上がったのではない。柱時計が九つ鳴ったとき、実際にはまだ八時五十三分だった。みんなが「まだ時間がある」と油断している隙に、片桐は久世と会っていた。そして口論になり、観測機材の真鍮部で殴った。久世は倒れ、咄嗟に片桐が時計をいじったとき、裏板のねじを掴んだ――そう考えれば、久世の手の中の金具も、体温の残り方も、すべて説明がつく。

「どうして」

片桐は答えず、窓の外を見た。雪は止み、雲の切れ間に、月のない空だけがあった。

「第七話を見つけたの」 私は続けた。観測室のプリンターに残っていた最後の一枚を広げる。 「そこには、こう書いてあった。“火をつけたのは、誰かを守ろうとした男だった。だが守られた人間は、十二年、炎の中に置き去りにされた”」

片桐の喉が動いた。

私はさらに言った。 「火事の前、資料室で何があったのか、鳴海はずっと言えなかった。原稿を奪おうとした大人に、腕を掴まれていたんでしょう。あなたはそれを見た。ランプを倒した。追い払うつもりだった。でも火は回りすぎた。そうね」

片桐はやっと目を閉じた。観測室の鉄の匂い、機械油、七分進んだ時計、そして鳴海の怯えた沈黙。そのすべてが、遅れてひとつの告白に変わっていくのがわかった。

「久世は」 片桐がかすれた声で言った。 「今夜、全部公表するつもりだった。鳴海のことまで。自分が盗んだ原稿のことも、俺が火をつけたことも、面白い告白録みたいに」

雪の匂いの薄い廊下で、私は初めて、この館の夜がどこまでも古い傷口に見えた。

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