AIラブストーリー『東京、再生ボタンの恋』2/7話 「下北沢で待ち合わせ」

AIに気ままに書かせてみた

登場人物

  • 瀬尾真琴……神保町の出版社で働く39歳。きちんとして見えるのに、昔のレシートや映画の半券を捨てられない。
  • 藤代遼……下北沢で中古レコード店を営む40歳。無口なくせに、音楽の話になると急に少年みたいな目をする。
  • 篠原紗英……真琴の高校時代からの親友で、代々木上原在住のWebデザイナー、39歳。さっぱりしていて、弱っている時ほど人にやさしい。
  • 橘航平……三軒茶屋で小さなバーをやっている41歳。誰かの話を否定せずに聞ける、貴重な大人。
  • 水沢菜月……中目黒を拠点に活動するフォトグラファー38歳。自由そうに見えて、いちばん昔に縛られている。
  • 佐伯柊司……真琴の上司で編集長、42歳。静かな人だが、静かな人ほど大事な場面で強い。

六人が揃ったのは、それから一週間後の金曜の夜だった。

会場は、航平の店――三軒茶屋の路地裏にあるバー「ムーンライト」。名前だけ聞くと気取っているが、実際はカウンター八席、テーブル二つ、壁に古い映画ポスターとB2サイズの音楽雑誌の切り抜きが貼られた、居心地の良すぎる避難所みたいな店だ。

最初に来たのは紗英だった。大ぶりのピアスを揺らしながら、「ねえ、平成に置き忘れた部室の会合ってここ?」と笑う。続いて菜月が大きなトートバッグとフィルムカメラを抱えて現れ、遅れて柊司が出版社帰りのスーツ姿で入ってきた。最後に遼が真琴と一緒に来たとき、航平は氷を入れたグラスを拭きながら「うわ、ちゃんと揃った」と本気で驚いた顔をした。

誰かの結婚式でも、法事でもないのに六人が顔を揃えるなんて、もう何年ぶりかわからない。

「みんな老けたね」 菜月が最初の一言を放つと、紗英が即座に言い返した。 「でも自分の顔の疲れ方がいちばんプロっぽくて悔しい」 「仕事が顔に出る年齢だからねえ」 柊司が穏やかに言うと、航平が「編集長っぽいこと言うのやめて」と笑った。

MDの音源を流すと、一気に場がざわめいた。
自分たちの若い声は、酔っていないのに酔う。
みんな、あの頃は未来を雑に信じていた。

「この時期って、渋谷のTSUTAYAまだ待ち合わせ場所として生きてたよね」 紗英が言う。 「待ち合わせ、ハチ公前かTSUTAYA前か、あとモヤイ像」 真琴が返す。 「で、連絡つかないと公衆電話探すんだよ」 遼。 「メール来てるのに気づかなくて、センター問い合わせ連打」 航平。 「着うたに命かけてた時代」 菜月。 「月末にパケ代で青ざめる時代でもありました」 柊司。

笑い声が重なる。
昭和の終わりに生まれ、平成の入口で育った自分たちにしかわからない、あの中途半端なアナログとデジタルの境目。
便利じゃなかったからこそ、会えた時の嬉しさがいちいち大きかった。

話は自然に、大学時代に六人でやっていた映像サークルのことへ流れた。東京の街の音や光や人の横顔を撮っては、深夜のファミレスで編集して、眠い目のまま始発で帰る。たいした賞も取らなかったし、就職に直結したわけでもない。それなのに、思い出すと胸が少し痛くなるのは、あの時間だけが人生の「予鈴」みたいだったからだ。

「せっかくだし、あのMDをきっかけに何か作らない?」 そう言ったのは真琴だった。自分でも驚くくらい自然に言葉が出た。 「東京の音と写真と文章。今の自分たちで、もう一回」 「いいじゃん」 菜月がすぐ乗る。 「私、写真出す。昔のネガもまだある」 「Webなら私やる」 紗英がスマホを振る。 「場所なら店貸す」 航平。 「音源整理は俺」 遼。 みんなの視線が最後に柊司へ向く。 「本にするなら、僕が面倒を見ます」 編集長のその一言に、店の空気が少しだけ引き締まった。

会は盛り上がり、夜が深くなるにつれ、それぞれの現在もぽつぽつこぼれ始めた。
紗英は長く付き合った恋人と別れたばかりだった。
菜月は海外の仕事の打診を受けているらしい。
航平は店を守ることで精一杯で、自分のことはたいてい後回し。
柊司は独身を冗談にしながら、冗談だけでは済まない年齢に入っていた。
遼は店を続けているけれど、配信の時代に「モノとしての音楽」を売る苦労を抱えていた。
真琴は、きちんと働き、きちんと生きているつもりで、たぶん一度もちゃんと恋を終わらせたことがなかった。

店を出る頃には終電が迫っていた。
三茶の夜風は少し冷たくて、酔いを覚ますにはちょうどいい。

「真琴」 駅へ向かう途中、遼が呼び止める。 「なに?」 「今日、来てくれてよかった」 「私も」 「……たぶん、これからちょっと忙しくなるな」 「六人で何か作るって、そういうことだよね」

そう言って笑った真琴の横顔を、遼は少しだけ眩しそうに見た。
昔と違うのは、勢いだけじゃもう何も始められないこと。
でも昔と同じなのは、始まりそうな気配の前では、大人もちゃんと不器用になることだった。

改札で別れる直前、遼が言った。

「真琴ってさ、まだイヤホン片方ずつで音楽聴けるタイプ?」 「……何その質問」 「いや、できる人とできない人で人生変わる気がして」 「できるよ」 「そっか」

その「そっか」に、何が含まれていたのか。
真琴は電車に乗ってからもしばらく考えていた。

山手線の車窓に、夜の東京が流れていく。
見慣れたはずの街が、少しだけドラマのセットみたいに見えた。
恋が始まる時って、たぶん街のほうが先に気づくのだ。

タイトルとURLをコピーしました