AIラブストーリー『東京、再生ボタンの恋』4/7話 「午前二時のファミレス」

AIに気ままに書かせてみた

登場人物

  • 瀬尾真琴……神保町の出版社で働く39歳。きちんとして見えるのに、昔のレシートや映画の半券を捨てられない。
  • 藤代遼……下北沢で中古レコード店を営む40歳。無口なくせに、音楽の話になると急に少年みたいな目をする。
  • 篠原紗英……真琴の高校時代からの親友で、代々木上原在住のWebデザイナー、39歳。さっぱりしていて、弱っている時ほど人にやさしい。
  • 橘航平……三軒茶屋で小さなバーをやっている41歳。誰かの話を否定せずに聞ける、貴重な大人。
  • 水沢菜月……中目黒を拠点に活動するフォトグラファー38歳。自由そうに見えて、いちばん昔に縛られている。
  • 佐伯柊司……真琴の上司で編集長、42歳。静かな人だが、静かな人ほど大事な場面で強い。

遼の店で音源整理を始めたのは、雨の土曜だった。

店のシャッターを半分閉め、カウンターの上にノートパソコン、MD、DVテープ、CD-R、使い道のわからない変換ケーブルが並ぶ。まるで平成初期のテクノロジー墓場だと真琴が言うと、遼は「供養じゃなく発掘」と訂正した。

音源を一つずつ確認していくうちに、街の音だけでなく、六人の会話や、小さな喧嘩や、意味のない笑い声まで出てくる。
秋葉原の雑踏。
高円寺の踏切。
お台場で風に負けた録音。
終電を逃した新宿の朝方。
東京という街は、あの頃の自分たちにとって、舞台であり、言い訳であり、逃げ場でもあった。

「真琴」 遼が一枚のCD-Rを掲げる。 「見て。タイトル」 マジックで書かれた文字は、少し傾いていた。
“眠れない夜用” 真琴は吹き出す。 「なにこれ、痛い」 「当時の俺の全力」 「やだ、黒歴史」 「でも、たぶんお前向けに焼いたやつ」 「……え?」

遼は気まずそうに目を逸らした。 「いや、渡せなかったから、結果ただの円盤」 「そんなの、今さら言う?」 「今さらだから言えるんだろ」

店の空気が変わる。
雨音が窓を叩くリズムだけが妙に大きく聞こえた。

真琴はCD-Rを受け取った。
手書きの文字。少し雑な線。盤面に貼られた小さなシール。
サブスクのプレイリストにはない、誰かが自分のためだけに並べた痕跡。
それだけで、胸の奥の、もう固まったと思っていた場所がゆっくりほどけていく。

「なんで渡さなかったの」 「タイミング」 「便利な言葉」 「便利だけど本当だった」

遼は椅子にもたれ、天井を見た。

「大学の最後のほう、お前、お父さんのことで大変だったろ。俺、自分の気持ち投げるの、違う気がして」 「……そっか」 「それに、あの頃の俺、東京から逃げることしか考えてなかったし」

真琴は初めて知る顔を見た。
遼はいつも、どこか身軽そうに見えた。音楽と一緒にどこへでも行ける人だと思っていた。でも本当は、行きたい場所より、ここにいられない理由を探していたのかもしれない。

作業は結局、夜までかかった。
気づけば終電が危うい時間で、外の雨もやむ気配がない。
遼が「昔みたいにファミレス行くか」と言い、二人は環七沿いの店へ向かった。

午前二時のファミレスには、東京の敗者復活戦みたいな空気がある。
終電を逃した若者、企画書を直す会社員、別れ話の途中みたいなカップル、参考書を開いた受験生。
蛍光灯は容赦なく、ドリンクバーの機械音は妙に明るい。
それでもあの頃の自分たちは、こういう場所で何度も「これから」の話をした。

「紗英、最近どう?」 遼が訊く。 「元気そうに見せるの、うまいよね。でも別れたあとって、突然冷蔵庫の中身で泣けたりするじゃない」 「わかる気がする」 「菜月は海外行くか迷ってる。航平はたぶん止めたい。でも止める資格がないって顔してる」 「航平らしいな」 「柊司さんは……大人すぎて、逆に何考えてるかわからない」 「真琴は?」 「え?」 「真琴は、何考えてる」

ドリンクバーの氷が、カランと溶けた。

「……昔、好きだったものを、もう一回好きになっていいのかなって」 真琴はストローの先を見る。 「それ、人じゃなくて東京のこと言ってるようで、人のこと言ってるだろ」 「ずるい、そうやってすぐわかるの」 「わかるよ。昔から」

遼はそう言って笑った。
その笑い方が、どうしようもなく懐かしくて、どうしようもなく今だった。

店を出る頃には雨があがっていた。
濡れたアスファルトに街灯が伸びて、東京は少しだけきれいに見える。
二人は駅まで遠回りして歩いた。

「真琴」 「なに」 「昔の続き、っていうのは嫌なんだ」 「……うん」 「昔できなかったことを、今やり直したいわけじゃない。今の俺が、今の真琴をちゃんと好きになったら、それは新しい話だと思いたい」

真琴は立ち止まった。
駅前の自販機の光が、遼の横顔を青白く照らしていた。
若い頃なら、その言葉だけで全部信じて飛び込めたかもしれない。
でも大人の恋は、嬉しいほど慎重になる。

「考えさせて」 「うん」 「でも、嬉しい」 「それで十分」

十分なわけがないくせに、遼はそう言った。
その不器用さに、真琴は少し救われた。

始発までまだ何時間もある東京の夜で、
恋だけが、時間通りには進まなかった。

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