AIラブストーリー『東京、再生ボタンの恋』5/7話 「夕立の観覧車」

AIに気ままに書かせてみた

登場人物

  • 瀬尾真琴……神保町の出版社で働く39歳。きちんとして見えるのに、昔のレシートや映画の半券を捨てられない。
  • 藤代遼……下北沢で中古レコード店を営む40歳。無口なくせに、音楽の話になると急に少年みたいな目をする。
  • 篠原紗英……真琴の高校時代からの親友で、代々木上原在住のWebデザイナー、39歳。さっぱりしていて、弱っている時ほど人にやさしい。
  • 橘航平……三軒茶屋で小さなバーをやっている41歳。誰かの話を否定せずに聞ける、貴重な大人。
  • 水沢菜月……中目黒を拠点に活動するフォトグラファー38歳。自由そうに見えて、いちばん昔に縛られている。
  • 佐伯柊司……真琴の上司で編集長、42歳。静かな人だが、静かな人ほど大事な場面で強い。

企画の公開日が近づくにつれ、六人の距離は妙に濃くなった。
昔の友人というのは不思議で、十年近く会っていなくても、一度同じ方向を向けばあっという間に生活の内側へ入ってくる。

五月の終わり、菜月の写真を選ぶために、六人はお台場へ撮影に出た。
東京湾沿いの風は強く、雲は低く、観光客たちはスマホをかざしながら歩いていた。
菜月はファインダーをのぞくたびに表情が変わる。いつもの軽さが消え、何かに取り憑かれたみたいに街の隙間を見つめる。

「菜月、その写真、どこで使うの?」 真琴が訊くと、 「最後のページ。東京ってさ、きれいな景色より、ちょっと寂しい場所のほうが本音出るから」 と彼女は答えた。

その日の帰り、急な夕立で六人は観覧車の下に足止めを食らった。
ビニール傘を買うにも売店は混み、みんな中途半端に濡れて笑うしかない。
雨宿りしながらコンビニのコーヒーを飲んでいると、航平が何気なく言った。

「菜月、海外の話、どうするの」 空気が少し止まる。

菜月は濡れた前髪を耳にかけた。 「ベルリン。三か月だけ、写真集の仕事」 「行くの?」 紗英が目を丸くする。 「迷ってる」 「迷うんだ」 「迷うよ。東京、嫌いじゃないし」

航平は何か言いかけて、やめた。
その横顔を見て、真琴はふと思う。
言えないまま長くなる気持ちは、歳月と一緒に消えるんじゃなくて、ただ座り込む場所を覚えるだけなのだと。

観覧車のガラスに雨粒が流れる。
子どもの頃は未来の乗り物みたいだったのに、いま見ると、ただゆっくり回るだけの、少し切ない機械だ。

その夜、紗英から真琴に電話があった。
今どき珍しい通話だったから、真琴は一瞬だけ心配になる。

「もしもし」 『ねえ、あんた、遼のことどうするの』 開口一番それだった。 「なんでみんなそういう聞き方するの」 『聞き方の問題じゃなくて、見ててわかるから』 「……わかる?」 『わかる。航平も菜月も、柊司さんだってわかってる』

ベッドに腰掛けながら、真琴は黙る。

『でもね』 紗英の声が少しやわらかくなる。 『好きって、若い時みたいに“勢いで勝つ”ものじゃなくなるよ。今は“ちゃんと選ぶ”ものだよ』 「選ぶ……」 『そう。相手を、じゃなくて、自分の気持ちを。面倒でも、恥ずかしくても、これが私の本音ですって認めること』

電話の向こうで、何かグラスを置く音がした。
紗英もたぶん、自分の別れをようやく言葉にし始めているのだろう。

翌日、真琴は会社で柊司に呼ばれた。
会議室で差し出されたのは、新しい企画書だった。
『東京、再生中。』を書籍化するなら、真琴を中心に据えたいという内容。そして柊司は続けて言った。

「もし形になるなら、秋のパリブックフェアまで持っていきたい。真琴さん、同行できますか」

パリ。
遠い。
でも、編集者としては喉から手が出るくらい魅力的な話だ。

「すぐに返事じゃなくて大丈夫です」 柊司は言う。 「ただ、仕事としても、人生としても、いいタイミングかもしれない」 「人生としても?」 「ええ。場所を変えると、自分の気持ちが見えることもあるので」

会議室を出たあと、真琴はしばらく廊下で立ち尽くした。
東京に残ることと、東京を離れること。
どちらが前に進むことなのか、すぐにはわからなかった。

帰り道、遼から連絡が来た。
“今夜、少し会える?”

会えない理由を探そうとして、真琴はやめた。
もう、そういう年齢ではない気がした。

渋谷の宮下パーク近くで落ち合うと、夜風は雨の名残を運んでいた。
高架下のネオン、外国語の会話、スケボーの音。
昔の渋谷より整っているのに、少しだけ寂しい。

「真琴、なんかあった?」 会ってすぐ、遼が言う。 「顔に出てる?」 「出る時だけ、すごく出る」

真琴はパリの話をした。
遼は黙って聞いたあと、「いい話じゃん」と言った。
それが、大人の正しい反応だとわかっているからこそ、真琴は少しだけ腹が立った。

「そういう言い方、ずるい」 「じゃあ何て言えばいい」 「行くな、とか」 「言える立場かよ」 「……ないね」 「ないよ」

二人のあいだに、東京の夜が入る。
人の波だけが途切れず流れていく。

「でも」 遼はポケットに手を入れたまま続けた。 「立場がないから言えない、で終わるの、もう嫌なんだよな」 「遼」 「好きだよ、真琴。昔からじゃなくて、今、好きだ」

観覧車よりずっと遅く、
でも確かに、恋はそこで一周した。

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