AIサスペンス『雪の終駅』1/7話 「すすきのに降る古い雪」

AIに気ままに書かせてみた

登場人物

  • 朝倉慎吾……札幌の地方紙記者
  • 冬森梓……道警の刑事
  • 遠野紗英……小樽でバーを営む女
  • 小野寺泰造……新得に暮らす元駅長
  • 鳥羽颯太……失踪した姉を二十年探している除雪車運転手

二月の札幌は、もう春を名乗りたがっているくせに、夜になると律儀に冬へ戻る。人間と同じで、そう簡単に性分は変わらぬらしい。
朝倉慎吾は、すすきのの裏通りで、死んだ男の顔を見下ろしていた。男は中村礼一、かつて鉄道写真で名を売ったカメラマンで、晩年は場末の酒場で昔話を肴に飲むだけの老人だった。胸をひと刺し。財布は残り、腕時計もある。金目当てではない。

遺体のそばに、ひとつだけ奇妙なものがあった。古びた封筒である。血で濡れたそれを開くと、中からモノクロ写真が出てきた。
雪の駅。吹きさらしのホーム。客車の脇に立つ若い女が、赤い旅行鞄を胸に抱えている。背後には別の女の横顔。どちらもコートの襟を立て、風に耐えるように目を細めていた。

写真の裏に、青いインクで一行。

「狩勝峠で、鳥羽雪乃は消えた」

朝倉の喉が、冷たい石を飲んだように詰まった。
鳥羽雪乃。二十年前、道内のクラブで歌っていた女。札幌へ向かう夜行列車の途中で姿を消し、春の融雪まで待っても遺体が見つからなかったため、半ば伝説めいた失踪事件になった。地方紙の新人だった朝倉は、その記事を切り抜きでしか知らない。だが、社の古参連中は、あれを口にするときだけ、妙に声を潜めた。

「知ってる顔ですか」

背後から声がした。振り向くと、黒いコートに身を包んだ女が立っていた。道警捜査一課の冬森梓である。目元の涼しい女で、愛想を節約することで人生の無駄を減らしているようなところがあった。

「事件としては知らない。名前だけだ」 「なら、今夜から知ることになります」

冬森は写真を受け取ると、しばらく黙って見ていた。それから、背後の女の顔に指先を置く。

「この人、どこかで見たことがある」 「誰です」 「小樽のバー『青い灯』のママ。遠野紗英に似てます」

風が吹き、規制線が乾いた旗みたいにばたついた。
その瞬間、朝倉は写真の下端に、鋏で切られたような不自然な跡を見つけた。本当は、もうひとり写っていたのだ。誰かが、そこだけ切り取って持ち去ったのである。

その頃、十勝の郊外では、鳥羽颯太が除雪車の勤務を終えてアパートへ戻ったところだった。郵便受けに、差出人のない封筒が入っている。中には、同じ写真の複製と、短い紙片。

「姉は事故じゃない」

颯太は、封筒を持つ指に力をこめた。
雪乃が消えたとき、彼はまだ七つだった。姉の声だけは覚えている。雪の夜でも、炬燵の赤よりあたたかい声だった。
その声を最後に聞いてから二十年、彼は除雪車で雪をどかしながら、生き埋めにされた時間を掘ってきたのかもしれなかった。

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